セミ(秋立ぬ)

蝉もカナブンも
立秋の朝 階段にいた
気温が一日中30度を切らない
暑かった ほんとうに暑かった
階段が涼しかったのか
2匹、3匹 彼らは集まって
ゴロンとひっくり返ったり
うつ伏せになって脚を伸ばしていた
もう何も怖いものはない
無防備な格好でも
そして 彼らは静かに昇天していった




風を受け
雨を感じ
草の匂いを吸って
樹液を力に
自然の中で生きてきた
あっという間の一生だったかもしれない
生き延びるために
体にチューブも入れない
酸素吸入もしない
見守る人もいない
でもジタバタなんかしなかった
吸い込まれていくように
すべてが抜けて形だけが残った