トノサマバッタ

トノサマバッタの脚
トノサマバッタの手は脚である
(ダイミョウバッタ)



前、中、後 3つの脚がある
前は手ではなくて
前脚と言うらしい
順に中脚、後脚
脚裏には
画鋲のように真ん中に
はりがでている
草の茎につかまって体をささえたり
地面をけって遠くへ飛ぶときに使う




我々も冬山に登るとき
アイゼンをつけて滑らない様に
体を支え
また早く走るときに
スパイクのついた靴を履いたりする
トノサマバッタと僕達は
やっていることに
そんなに大きな違いはない
彼らの生きる知恵を学び
感謝も忘れない様にしよう

カマキリ

幼虫から成虫になっても
三角形の顔の中に
目 口 鼻 触角が
全てがおさまって 皺もなく
つやつやした顔をしている
無駄なことはせず
やる事はきっちりやって
次の世代を確実に残して
去ってゆく彼ら




僕たちは
赤ちゃん 幼児
子供 少年 青年 大人
そして老人の顔へと
時を刻んで変わってゆく




一年の命と七十九年の命
彼らと僕達に
その時間の差は必要だったのか
無駄はなかったか
やるべき事を残していなかったか
まだリセットするだけの
時間が少し残っている
もう一度輝く顔を
取り戻すために
そして確実に
生きた証を残すために
意識がうすれてゆく前に
やらなければならない事がある

オオクロアリ

昼間の気温が30度を切った翌日
二匹のアリを見た
いつもは忙しそうに
動きまわっているアリだが
一匹は草の茎にいる
イバラヒゲナガアブラムシの
甘い汁を吸って動かない
もう一匹は後ろにいて
触角でもう一匹の体に触れたり
行ったり来たり落ち着きのない行動が続く




餌の甘い汁を吸わずにいるアリ
本能で餌を採って巣に帰る
そのくりかえしの日常が
何かを感じてしまったのか
ふと昔
食事がのどを通らなくて
ただ々愛おしくて 会いたくて
せつなくて 悶々と過ごした初恋
そんな日があった事を
思いだしてしまった
思い出は人間だけのもの
なの かもしれない

カナブン

闘い疲れて
大切な緑のよろいに
穴があいてしまった




この季節になると
ほとんどの仲間たちが
消えてゆく
生をまっとうして
静かに逝く
みんな色々な生を
生きてきたのだろう





真夏の太陽のもとで
外敵に立ち向かい
れんげ草の花の上で
幸せだった瞬間もあった
時は流れても
止まってはくれない
それが幸せなのか
いまはわからない

キアゲハ

モミジアオイの深紅の はなに
キアゲハの少しほころびかけた
大きな翅がかぶさるように
蜜を貪っていた
近寄ると
すぐ飛び去ってしまった
また戻ってきた
3回繰りかえして
蜜を吸い始めた
蝶の警戒心だったのか
秋の気配が忍び寄ってきていた
大きなキアゲハがモミジアオイ
擁かれるように
暫く動かなかった


アキアカネ

この季節になると
しおから蜻蛉から
アキアカネに主役が代わる
季節の変わり目




蜻蛉の習性は
草の茎に止まると
先ず翅を水平に伸ばす
周りの様子をうかがい
安全を確認にしたところで
翅をハの字にして
ゆっくり自然に溶け込んでゆく




この状態になった時
多少声を出そうが周りで動こうが
悠然と構えて微動だしない
複眼で見ているはずなのに
この威風堂々とした
この態度に 恐れ入る
学びたい まねしたい と思ったり

ジョロウグモ

ビルの屋上に小さい庭と
シラカシ シャラノキ ソヨゴ アズキナシ
が20本ほど植えられている
そこに女郎蜘蛛のオスとメスが
生活していた
メスは大きく赤、黄色、黒色で
大きなお腹に派手な模様を作っていた
オスは小さくて目立たなく地味
ほとんど記憶に残らなかった






メスが派手で、オスが地味
昆虫の世界でも良くあるようだが
逆もあるようだ
メスは巣の真ん中で脚を
大きく広げて獲物を待ち
オスは巣のはじにいて
じっとメスの行動を見守っている
オスは交尾をするために
様子をうかがっているという
そのタイミングが悪かったり
メスの気に障るようなときに
その行為に走ると
パクット食われる事もあるという
カマキリも同じような話を聞いた事がある
でもそんなことは 信じたくない





ある日その巣に 下半身のない
オスがぶら下がっていた
もしかしたら と思った
でも現場を見たわけではないので
何とも言えない 
人は食われることはないが
心が傷ついて 立直れない
日があった事を思い出した